トウモロコシのお化け
お久しぶりです。
また宿泊研修とかいろいろありました(汗)。


ウィトラコーチェ

学校に発生した『トウモロコシのお化け』です。
黒穂病という病気によって発生する一種のキノコで、メキシコでは『ウィトラコーチェ』と呼び、なんと食用にするそうです。
以前国立科学博物館へ行ったときの記事でも紹介しましたね。

| 変な物 | 13:23 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
多肉植物ミニ寄せ植え
 多肉ミニ

増えた多肉植物で、小さい寄せ植えを作りました。
百均で可愛い鉢があったので利用したら、なかなか良い仕上がりに。
いくつか作って、学校の収穫祭に出そうと思います。
| 植物 | 23:06 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 エピローグ
酒場のドアが開き、若い男が店に入る。
あのコミュニティ構成員だ。

「よう、ケント。グレースはいないぜ」

「はあ? いないんすか?」

マスターの言葉に、彼は落胆の表情を浮かべる。

「お前が来たら、好きな酒を好きなだけ飲ませてやるように言われてる。まあ座れよ」

「俺が飲みたいのは、グレースさんが注いでくれる酒っす。いないなら帰ります」

「そりゃそうか」

マスターはあっさりと肯定した。

「催涙スプレー喰らっても、お前はグレースのファンか」

「いや、一歩間違えばアブナイ奴みたいに聞こえるっすよ、それ」

「ところで、例のネゲルって科学者だけどよ、コミュニティに拉致されたんだって?」

「ええ、鄭長老も奴にはかなり怒ってたもんで。今頃は解剖台のカエルの気分を、少しは味わってるんじゃないっすか?」

ケントはニヤリと笑う。

「ところでグレースさん、何処に行ってるんすか?」

「どこってそりゃ……見舞いだよ」


………





とある大病院。
ガードマンたちが機関銃で武装した病院など、この国では珍しくもない。

「401号室……ここか」

ジャンは病室のドアを開けた。
一緒にいるのは、リチェ、グレース、そしてダージェン。
殺風景な病室のベッドには、白人の青年が横たわっていた。
頭には包帯が巻かれ、左手には栄養点滴の管が繋がっている。

「……綺麗な顔してるね」

リチェが言う。

「そうだな」

グレースが撃った銃弾はアレクセイの頭に命中したが、その後手術で摘出し、奇跡的に一命は取り留めた。
本人の生命力の強さあってのことだったが、彼はまだ目覚めない。
これから永遠に目覚めることは無いかも知れないと、医者は言っていた。

「……前を向いて歩こう、後ろに目はついていないから……だったよな」

「ええ」

グレースはアレクセイの手をそっと握り、暖かみを確かめた。
ジャンはこのような場面が苦手らしく、一人病室から出る。

「これで……良かったんだよな」

「全力を尽くした結果がこれならば、これが最良の結末ということだ」

同じように病室から出たダージェンが言う。
彼が公安を通じて処理局に根回しをしたおかげで、ジャンとサムは始末書一枚を書いただけで済み、リチェとリーゼも、処罰は免れた。
そうでなくとも彼らは先の脱出劇で、処理局ではすでに英雄扱いになっていたのだから、それほど大目玉を喰らうことは無かった。
爆弾で怪我をしたカンタロスも近いうちに退院し、仕事に復帰できるそうだ。


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| 小説 | 13:05 | comments(3) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 27
 はっと振り向くと、グレースが立っていた。
一体何時の間に、何処から入ってきたのか考える前に、ジャンは叫んだ。

「馬鹿! 逃げろグレース!」

「アレクセイ……? アレクセイよね?」

グレースはジャンの制止も余所に、アレクセイに歩み寄る。
リチェとリーゼが飛び出し、その両腕を掴んだ。

「ジャン! アレクセイを撃つなんて駄目! 何で幼馴染み同士、殺し合わなきゃならないの!?」

彼女の頬には、既に大粒の涙が伝っていた。
アレクセイの生存を知り、今まで眠っていた悲しみが目覚めたのかもしれない。
そしてアレクセイにも、変化が起きていた。

「グレ……ス……」

「アレクセイ!? 私が分かるのね!?」

ジャンはアレクセイの目に、正気の色が戻りはじめたように感じた。

「アレクセイ、もう止めて! もう貴方は苦しまなくていいの! 一緒に……一緒に帰りましょう!」

必死に訴えるグレース。
サムは銃の照準をアレクセイに向けたまま、沈黙している。
傭兵としての勘が、今撃たなくては駄目だと告げていたが、グレースの悲痛な姿にそれが躊躇われた。
アレクセイは銃を降ろし、事態は良い方向へ集結しつつあるように見えた……が。

「……ウアァァァァァッァァァッッ!!」

アレクセイが突如頭を抱え、苦しみ出す。
膝を着き、地面に激しく頭を打ち付け、ひたすら叫ぶ。

「アレクセイ! どうしたの!?」

「グレースさん、離れて!」

リチェがグレースの手を引き、強引にさがらせる。
アレクセイは確かに、グレースを見て理性を取り戻しかけた。
だが憎悪がそれとぶつかり合い、人格のクラッシュを加速させてしまったのかもしれない。

「ォォオオオ!!」

叫びながら、アレクセイはグレースに銃を向けた。

「……これまでだィ!」

サムがアサルトライフルを撃つ。
しかし放たれた銃弾は、アレクセイに当たることはなかった。
寸前に、ジャンがアレクセイに体当たりを喰らわせたのである。

「あのとき俺が……お前を助けられれば……」

アレクセイを押し倒し、その額に拳銃を突きつける。

「こうする以外……お前を救えないなら……!」

「アァァァッ!」

ジャンが引き金を引く直前に、アレクセイの膝蹴りが、ジャンの体を吹き飛ばした。
悲鳴すら上げられずに、ジャンは放物線を描いて床にたたきつけられる。

「が………ッ!」

「ウゥゥゥ………」

アレクセイが起き上がり、追撃をかけようとする。
リチェがジャンの前に飛び出して盾になり、サムは最早一切躊躇せず、アレクセイの背に銃を向けて引き金を引くが、弾が出ない。
アレクセイがジャンに迫った。


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| 小説 | 22:04 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 26
研究所の外には、何台かの警察車両が停まっていた。
特殊部隊用の、人員輸送車である。

「増援はまだか?」

現場指揮官であるダージェンが、部下に尋ねる。

「もう少しかかるとのことです」

「……そうか」

何よりも迅速さが求められる状況と判断したダージェンは、一度に大量の手勢を集める手間を惜しみ、少数精鋭でアレクセイを追跡した。
総監を始めとする幹部数名の逮捕により、公安警察の指揮系統が未だ混乱していたこともあって、大部隊をすぐさま動かすことができなかったのだ。
後発の増援部隊が到着すれば、研究所を包囲できる。

「問題は……」

ダージェンは近くに止められている、ゴミ回収トラックに目をやった。
ジャンたちが既に、ここに来ているということだ。
部下には民間人の保護を最優先にと命令したが、中から聞こえてきた銃撃戦の音、そして壁が崩れるような音に不安が掻き立てられる。

「隊長! 内部の部隊より報告! 軍用と思われるロボットが出現、ターゲットを連れ去ったとのことです!」

ダージェンの脳裏に、一本角の大蛇の姿が思い浮かぶ。
状況は更に混沌としつつあるようだ。

「本部へ連絡! 対装甲用兵器を用意の上、増援の派遣を急げ!」

「はっ!」






………

「玄関はサツが固めてますね」

ワゴン車の中から、若い男が双眼鏡で外を眺める。
ジャン達の逃走に協力した、コミュニティ構成員である。

「ルヴォーさんのトラックも停まってる……無事だといいけど」

「入れそう?」

隣に座る、グレースが尋ねた。

「銃声も聞こえたし、入るのは危険ですよ」

言いながら車を走らせ、側面に回り込む。
研究所を囲う塀の上には有刺鉄線が張り巡らされ、よじ登って入ることはできそうにない。
しかし、塀の近くの地面に直径1メートルほどの穴が空いていた。
車から降りて覗き込んでみると、塀の下をくぐるようにして続いている。
周囲には削られた工業用セメントが散乱し、どうやら一度埋められた穴を誰かが再び空けたようだ。

「誰かがここを通って、中に入ったのかな。とはいえ、やはり危険……って、グレースさん!」

言っている側から、グレースが穴の中に入ろうとする。
構成員は慌てて彼女の腕を掴む。

「お願い、行かせて! 警察に今追われているのは、多分……!」

グレースもまた、ダージェンから「これ以上関わるな」という連絡を受け、大蛇についての情報を聞かされていた。
そしてラジオで、パトカーを奪って逃走中の男と、それを追走するゴミ回収トラックのニュースを聞き、ジャンと同じ結論に至ったのだ。
追われているのは連れ去られた昔の仲間……大蛇の口調からすれば、恐らくアレクセイだと。

「駄目っすよ! グレースさんの身に何かあったらオレ、公開処刑にされちまいます! いや、されなくても自分で腹をかっさばいて……」

最後まで言い終わる前に、彼は悲鳴を上げて倒れた。
グレースが護身用の催涙スプレーを吹きかけたのだ。

「ごめんなさい! 店で好きなだけ飲ませてあげるから、許して!」

スプレーをポケットに押し込むと、グレースは穴の中に潜っていった。
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| 小説 | 22:21 | comments(1) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 25
 
刹那、明確な殺意と共に、リチェ目がけて銃弾が発射される。
鈍い音がして、リチェの頭が後ろに弾かれた。
その瞬間、引き金にかかったジャンの指を抑えていたものが、消し飛んだ。

「うおぉぉッ!」

アサルトライフルがフルオートで火を噴き、廃莢口から湯水の如くから薬莢があふれ出す。
だがアレクセイは横にステップを取ると、そのまま跳躍して近くの柱の影に隠れる。

「ジャン、こっち!」

リチェがジャンの腕を掴み、近くの曲がり角を曲がる。
そして壁に張り付いて、銃弾から身を隠す。

「リチェ、怪我は……」

ジャンはリチェの顔を見て、言葉を失った。
彼女の額の端、銃弾の当たった場所の人工皮膚が剥がれ、その下の金属フレーム……人間で言う頭蓋骨が露出していたのだ。
リチェはジャンを安心させようと思ったのか、微かに笑って見せた。

「端の方に当たったから、フレームの丸みで銃弾が外に逸れたみたい。小口径の弾だったし、大丈夫よ」

「……そうか」

ジャンは彼女の傷から目を逸らし、壁に張り付いたまま曲がり角に顔を出し、アレクセイの隠れている柱を覗いた。

「アレクセイ! もう止めてくれ! お前はもっと優しい奴だったはずだろう!?」

ジャンは懸命に呼びかける。

「互いに温め合わなきゃ、スラムじゃ生きていけねぇ……俺にそれを教えてくれたのは、お前じゃないか!」

再び銃声。
直後に、怒鳴り声が聞こえた。

「大スラムが無くなれば、そんなもの必要ない!」

……彼は既に、自分の知っているアレクセイでは無いのか。
ジャンの頭を、そんな想いがよぎった。

「終わらせるよ……ジャン! お前も……お前の好きな、鉄屑の街と一緒にいなくなれ!」

アレクセイがジャンの方へ向かって駆け出す。
人間の動きよりも、野生動物のそれに近かった。
ジャンは唇を噛みしめながらも、再びアサルトライフルを撃とうとする。
しかし突如、乾いた音を立てて、ジャンとアレクセイの間に缶詰のような物体が転がり込んだ。
アレクセイが反射的にバックステップを取った瞬間、缶詰が僅かに火を噴いて炸裂し、濛々とした白煙が周囲に広がった。

「な……!?」

狼狽するジャンの腕を、誰かが掴む。


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| 小説 | 13:24 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 24
 

「ドンピシャだ!」

ジャンはすぐさま、その後を追う。
この通りを戦場にするわけにはいかないので、銃撃はできない。
在る程度、安全と思われる距離を取りながら、サクモ研究所まで追走し、その後は……彼自身のやり方で決着をつける。

「考えてみれば今やってること、始末書じゃ済まないかもな」

ジャンはふと、場違いな発言をする。

「下手すれば、処理局をクビになるかもね。あんたのことだから、その後の事なんて考えてないだろうけど」

「鄭爺さんに頼んで、コミュニティの運び屋にでも雇って貰うさ。退職金プラス今までの貯金でお前を処理局から買い取れば、何も問題ない」

「買われてあげてもいいけど、あのお爺さんを私の背後に立たせないでね」

憎まれ口を叩きつつ、リチェは車内に置いてあった双眼鏡を手にし、パトカーの様子を確認した。

「……後部座席に何か大きい武器を積んでる」

「大きい武器?」

「よく見えないけど、形からして多分RPGだわ」

ロシア製の対戦車用グレネードランチャーで、この種の火器では世界で最も多く、そして長きに渡って使われている代物だ。
かつて紛争の絶えなかったこの国ではありふれた武器であり、大スラムでも役人の目を盗んで時々売られている。
それを奪ったか、或いは研究施設に置いてあった物を持ち出したのかも知れない。

「対戦車用の火器なんて、一体……」

言いかけて、ジャンは一本角の大蛇のことを想い出した。
堅牢な装甲を纏っていたようだが、対戦車用ロケットには耐えられないだろう。
大蛇との遭遇を予測して、重火器を用意したのではないか。

「火傷じゃ済まないかもね、私たち」

「よせやい、悲観論は」

ジャンはひたすらパトカーを追走するが、相手はゴミ回収者など目に入っていないのか、攻撃はない。
10分ほど追走し、大スラムを抜け、廃墟となったかつての工業地帯に出た。
忌まわしい記憶が、ジャンの脳内に蘇る。

「見えてきたぜ……」

コンクリートの城のような施設を睨み、ジャンは呟く。
玄関にある立ち入り禁止の表示を突き破り、パトカーはそのまま施設内へと突入していく。
ジャンはトラックを止めて降車し、少し躊躇したが座席の下に置いてあった武器の一つを手にした。

「アサルトライフル?」

「ああ。サムがスラムの骨董市で見つけたのを貸してくれたんだ。俺は銃には詳しくねぇが、AK−47の系統だとか言ってたな」

「ちゃんと使えるの?」

「試射してみたが、大丈夫だ」

安全装置を解除してコッキング操作を行うと、ベルトを肩にかけ、ジャンは研究所の中へと歩き出す。
内部にはクモの巣が張り、不気味な雰囲気に包まれている。
パトカーは少し奥で止まっていて、運転していたあの男が降りるのが見えた。
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| 小説 | 21:41 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 23
 

廊下を駆け抜け、階段を駆け下り、偶然曲がり角にいた同僚を思わず突き飛ばす。
それでも止まることなく走り続け、車庫へ辿り着く。
既にしまっていたシャッターを開けて、自分のトラックに乗り込むと、キーを差し込んでエンジンをかけた。

「間に合ってくれよ……」

ジャンは呟く。

「何に?」

「何ってそりゃ……」

隣からの問いに答えかけ、ジャンは目を見開いた。
いつの間にか現れたリチェが助手席のドアを開け、中に乗り込もうとしていたのだ。

「お、お前、いつからそこに!?」

「あんたが凄い勢いで走っていくのを見たから、何かあったのかと思って追いかけてきたの」

そう言いながら、リチェは助手席に座ってシートベルトを締める。

「ここまで来て私を置いていくのって、水臭くない?」

「……全く、変なメカだよ、お前は」

「あんたに似たのよ」

リチェはにやりと笑った。
リーゼが『羨ましい』と言った笑顔だ。

「ケッ……勝手にしやがれ」

ジャンはアクセルを踏んだ。
幸いゲートはまだ閉まっていなかったので、守衛には「忘れ物を取りに行く」などと適当なことを言って公道へ出た。
スピードを上げながら、ジャンはリチェに事の次第を説明した。
ダージェンから聞いた情報、そしてダージェンがあの男を追っているということ。

「……つまり、あの覆面男はジャンの昔の仲間らしい、というわけね」

「ああ……」

「行き先は分かってるの?」

「多分、サクモ研究所だ。完全に勘だけどな。テレビの電波を受信して、情報が無いか探してくれ」

「了解」

リチェは髪飾り型端末に手をやる。
そしてジャンの方を見て、再び口を開いた。

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| 小説 | 23:30 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 22
 


「ジャン、さがって!」

リチェが拳銃に手をかけた。
しかしその瞬間、大蛇の頭部から伸びた顎状のアームが、リチェの体を捕らえた。

「くそっ!」

ジャンは自分の拳銃を抜くが、そんなものが通用しない相手だと分かり切っている。
トラックの中にはサムが念のためにと用意したショットガン等が積まれているが、あくまでも対人用の火器だし、第一リチェを巻き込んでは話にならない。
サムならば関節部など装甲の無い部位に撃ち込めるだろうが、ジャンにそこまでの技術は無い。
加えて、未だにアルコールが残っていた。
リチェは脱出しようと藻掻くが、突然彼女の体がガクガクと痙攣を起こしたかと思うと、動かなくなった。

「リチェ!」

ジャンは叫びながらも、発砲することができない。
リチェを盾にされているも同じだった。
そのとき酒場の扉が開き、騒ぎを聞きつけたグレースが飛び出してくる。

「な……何なの、これ……!?」

「グレース、隠れてろ!」

ジャンが叫ぶ。
すると、リチェが言葉を発した。

「……ジャン……グレース……」

目の焦点が合っていないまま、普段よりも辿々しい声だった。
ジャンはリチェの髪飾り型端末に、大蛇の頭部から伸びたコードが接続されていることに気づいた。

「……僕には、発生機能が、無い。だから、彼女の口を、借りて話す」

それはリチェの言葉ではなかった。
リチェの電子頭脳にハッキングした大蛇が、その喉を使って喋らせているのだ。

「俺の名前を……? 一体何なんだ、お前は!?」

「僕は、もうすぐ、駄目になる。バッテリーが、後一月も、保たない。その前に、二人に、会いたかった」

大蛇は語りながら身動き一つせず、ただジャンとグレースを見つめるだけだった。
ジャンは大蛇が自分たちに敵意は無いことを悟ったが、依然として状況が理解できない。

「何故、俺達を知っている?」

「地下で、お前達を、襲った奴……僕は、あいつの、分身、なんだ」

地下鉄で自分たちを襲撃した、あの男。
ダージェンは未だ行方が掴めていないと言っていた。

「分身だと……? 奴は何者なんだ? 今何処にいる?」

「あいつは、きっと、動き始める。僕は、あいつを、止めに、行く」

「答えになってねぇぞ! 奴の居場所を教えろ!」

「それは、駄目、だ」

大蛇は言った。

「あいつに、会ったら、ジャンは、殺される」

「なっ……」

「ジャン、グレース……会えて、良かった、元気で」

その言葉を最後に、大蛇はリチェの体を地面に横たえ、解放した。
そのままくるりと背を向け、路地の中へと去っていく。

「おい、待てよ!」

ジャンは大蛇を追おうとしたが、リチェが起き上がるのを見て、思いとどまった。

「リチェ、大丈夫か?」

グレースに助け起こされるリチェに、ジャンは声をかける。

「……平気よ」

何とか立ち上がり、リチェは大蛇の消えていった闇の中をじっと見つめた。
グレースは不安に満ちた瞳を、ジャンに向けた。

「……まだ、終わっていないのね……?」

「……ああ」

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| 小説 | 23:41 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
鉄屑の街 21
 


騒動の翌日。
リチェの冤罪は証明された。
コミュニティは鄭老人の指示により、捕虜の警官たちを身動きできない状態のまま、テレビ局の玄関前に放置した。
「僕たちは殺されたはずの警官です」という張り紙とともに。
彼らのリーダー格であったラウドは、妙に周囲に怯え、背中を丸めて震えていたという……


「……はっ、申し訳ございません! これより回収局には……いえっ、そのようなことは決して……!」

……受話器を片手に、男は必死で弁解を続けていた。
傍らには、あの白衣の男もいた。

「はい、ヴァイスが嗅ぎ回っていますが、証拠を掴んでいるわけではありません。今の内に必ずや始末してみせます、副首相っ!」

男は電話を置くと、椅子に座って頭を抱えた。

「公安警察の総監ともあろうお方が、たかがゴミ回収車の運転手のせいで……」

白衣の男が言う。

「黙れ! 貴様の手駒こそ、結局何の訳にも立たなかったではないか! 何が《兵士の究極形》だ!」

その言葉に、白衣の男は眉をひそめて黙り込んだ。

「このままでは、副首相も我々を斬り捨てにかかる……その前に何か手を打たねば……」

……突如、部屋の扉が開く。
総監が反射的に目を向けると、そこには彼が今一番見たくない男が立っていた。

「ダージェン=ヴァイス……!」

「ご機嫌麗しゅう、とでも言うところか」

ダージェンはポケットから小型のラジオを取り出し、スイッチを押す。

《ヴァイスが嗅ぎ回っていますが、証拠を掴んでいるわけではありません。今の内に必ずや始末してみせます、副首相っ!》

総監は驚愕した。
先ほど自分が喋った言葉が流れてきたのだ。

「先ほどの電話での会話は全て盗聴、録音した。副首相は今まで、反ロボット派の人間から支持をえることでのし上がってきた男……これで合点が行ったよ」

ダージェンが片手を挙げると、武装した部下達が数名部屋に入ってきた。
銃を突きつけられ、白衣の男がひっと悲鳴を上げる。

「き、貴様……!」

青ざめた顔で、総監は辛うじて言葉を発するが、その直後にはダージェンの部下達に拘束される。

「外で迎えが待っている。……連れていけ」

「はっ!」

二人の部下が総監を引きずるようにして連行していった後、ダージェンは白衣の男に詰め寄った。

「……サクモ研究所における、プランβ研究の元主任……ドクター・ネゲルだな」

「な、だ、誰のことだ……!?」

ネゲルと呼ばれたその男は、自分に向けられている銃口に震えながらも問い返した。

「サクモ研究所は元々、JW7型ロボットやEEGサークレットを開発したシュミット社も協賛していた。お前も本来はシュミット社の科学者……だが、お前は独断でスラムの人間を拉致し、プランβの人体実験を非合法に行っていた。研究所が閉鎖された際、シュミット社はお前を起訴した」

「……」

「EEGサークレットにウィルスを仕込んだのは、お前だろう」

「……そうだ」

ネゲルは言った。

「私を捨てておきながら、私の開発した技術の一部をEEGサークレットに使った、本社の連中への置き土産だ。……顔と名を変えて身を隠した後、本社にはまだ私の同士がいた。彼らの手を借りれば容易いことだった」

「捨てられた、か。独断で違法な人体実験を行ったのはお前だろう」

ダージェンのその一言を、ネゲルは嘲笑して見せた。

「凡人めが……科学とは、犠牲あってこそなのだ……いかなる犠牲を払ってでも、己の探求心を満たすことのできる者だけが、新たな世界への扉を開けるのだ!」

ネゲルの言葉に、ダージェンは軽く溜め息を吐いた。

「若い美人がお前に会いたがっている。収容所に着いたら楽しみにしているがいい」

「なんだと……?」

「連行しろ」

部下達が即座に、ネゲルを拘束する。

……これでこの事件は終わる……だが……

部屋から連れ出されていくネゲルの姿を見ながら、ダージェンは心の中で呟いた。

……俺の仕事は、まだ終わらない……
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| 小説 | 17:04 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑TOP
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